当社は基本シナリオとして、世界経済が「U字型」の回復になり、完全な回復には長期間を要すると予想している。新型コロナウイルスによる経済活動の停滞を受け、世界の成長が大幅に鈍化したものの、景気回復の兆しが出始めており、徐々に勢いが増していると考える。新型コロナウイルスを克服するまでには時間がかかると予想しているが、世界中でワクチン開発競争が加速しており、各国で死亡率が低下していることから、ロックダウン(都市封鎖)が再導入される可能性は低いと見ている。強力な政策対応によって世界の経済活動が活発化しており、市場の機能が回復した。世界的にインフレ圧力が抑えられていることなどを踏まえると、景気回復が本格化するまで、各国中央銀行は大規模な金融緩和を維持すると予想する。景気回復のタイミングとペースが最大の不透明要因となっている。したがって、当社のポートフォリオでは市場ボラティリティにも耐え得るポジショニングを維持しつつも、魅力的な投資機会に迅速に対応できるよう、柔軟性の高い運用に努めている。

以下では、当社の世界経済の見通しの背景にある主な要因およびグローバル債券市場でどこに投資妙味が高いと見ているかの詳細な説明を提供する。

主要ファクター
米国:景気回復を模索
Cares Act

米国は3月に景気後退に陥り、5月には景気後退から脱却した可能性がある。これは事実上、政府の制限措置によって生じた歴史上初めての景気後退であったと言える。したがって、政府の制限措置が解除されれば、景気は急速に回復に向かう可能性がある。米国では最近、新型コロナウイルスの新規感染者数が以前のピーク水準に戻ったが、経済活動が再開されてから約6週間しか経過していないため、広範囲にわたるロックダウン(都市封鎖)が再導入される可能性は低いと考えている。

現在のところ、4~6月期のGDP成長率は年率換算で約30%~35%減になる可能性があり、これは3月末時点の当社の予想を下回る水準である。新型コロナウイルスの影響で深刻な打撃を受けた5つのサービス・セクター(ヘルスケア、レストラン、宿泊施設、旅客輸送サービス、及び娯楽活動)が成長率の主な押し下げ要因となる見込みである。また、建設、自動車生産、及びその他の製造業セクターの成長率も急低下する可能性がある。

広範囲にわたるロックダウンが再導入される可能性は低いと考えている。

建設、製造業、及び非レジャー・サービスなどのセクターは7~9月期末までにほぼ完全に回復する可能性があるものの、宿泊施設や旅客輸送サービスなどのセクターでは回復が遅れると考える。ただし、ヘルスケアやレストランの回復がGDP成長率に最も寄与すると見込まれる。これら両セクターの活動が新型コロナウイルス前の水準に戻る可能性は低いが、5月にはすでに回復し始めており、仮に部分的な回復にとどまったとしても、7~9月期のGDP成長率は非常に堅調な数値になる見込みである。自動車や住宅建設セクターの状況は良好である。

しばらくの間はソーシャル・ディスタンス対策が徹底される可能性があるため、新型コロナウイルス危機から完全に脱却するまでには時間がかかると考える。専門家は2~10年の歳月がかかると見ているが、そこまで長期化する可能性は低いと予想する。

欧州:経済への深刻な打撃を受け、大規模な政策対応がとられている
Corona Bonds

ユーロ圏経済の2020年の成長率は約9%減になると予想している。ドイツは6.5%減にとどまる一方で、イタリア、フランス、及びスペインは約11%減になる可能性がある。現在のところ景気は急速に回復しつつあり、購買担当者景気指数(PMI)は50前後の水準まで戻っているが、今年下半期は横ばいで推移し、仮に経済活動の制限が再導入されれば成長が大きく損なわれる恐れがある。ユーロ圏内では地域によって回復状況に差が出る可能性があり、政策支援の内容やその他の要因によって状況が左右されると見ている。

ドイツ経済はその他のユーロ加盟国よりも力強く回復する可能性があると見ている。

欧州各国は、GDPの約3%~4%に相当する規模の財政刺激策を実施しており、その他にも政府保証などの補助対策を導入している。政府保証の規模は各国によって異なり、ほぼ0%に近い国もあれば、実質的に上限が設定されていない国もある。ドイツは直近で大規模な刺激策を打ち出しており、これまでの刺激策の総額はGDPの9%近くにも及ぶ。

刺激策のタイミングを踏まえると、2021年に入ってからも政策の効果が続くと期待できるため、ドイツ経済はその他のユーロ加盟国よりも力強く回復する可能性があると見ている。労働市場が悪化している中で、欧州では従業員を無給で一時帰休させる動きが拡大しており、この大部分は財政政策での対応となっている。財政状況が許す限り、しばらくはこうした状況が続くと予想する。

一方、欧州中央銀行(ECB)はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ規模を6,000億ユーロ増やして総額1兆3,500億ユーロとし、さらに実施期間を6カ月間延長して2021年6月末までとした。市場に動揺が広がっている中で、こうした資産購入プログラムは金融政策の効果を浸透させることが目的であり、ユーロ圏各国の国債利回り低下のサポート材料となった。さらに、直近でのECB貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)では、3年物資金オペで1兆3,500億ユーロ供給された。この資金のほとんどは、可能な限り低い金利(-1%)で銀行が利用できるようだ。

英国では、イングランド銀行はマイナス金利政策を導入していないが、量的緩和政策を拡大し、資産購入枠を1,000億ポンド追加した。英国の財政刺激策は、GDP比で見ると欧州諸国の中でも最大規模となっている。英国と欧州連合(EU)の間では、英国のEU離脱後の通商協定案をめぐって対立が激化しており、未解決の問題が山積みとなっている。しかし、当社では英国とEUの両サイドが何らかの自由貿易協定(FTA)の枠組みで合意に至るとの基本シナリオを維持している。これは英国にとって、世界貿易機関(WTO)ルールに基づく一般的な貿易条件よりも有利な内容になる可能性がある。

アジア:各国の状況に差が生じている
Open Sign Chinese

アジアでは、経済のファンダメンタルズが各国で異なっており、さらに新型コロナウイルスの影響も各国で異なる。財政基盤が強固なアジア先進国(中国、シンガポール、韓国、及び台湾など)は、積極的な景気刺激策を継続し、新型コロナウイルスによる経済への悪影響を緩和することが可能である。一方、経済が脆弱であり、貧困ライン以下の生活を送る人口の割合が高い国々(インド、インドネシア、及びフィリピンなど)では、危機の悪影響を緩和することが困難となっている。これらの国々では、都市部の貧困率が高く、医療体制が脆弱であり、社会福祉が十分に整備されていないため、仮にパンデミックが加速し、隔離措置が時期尚早に解除されれば、状況が悪化するリスクがある。ただし、ラテンアメリカで感染が急拡大していることなどを踏まえると、アジアはその他のエマージング諸国と比べて、経済や医療の課題を克服する上で有利な立場にあると考える。

アジアはその他のエマージング諸国と比べて、経済や医療の課題を克服する上で有利な立場にあると考える。

アジアでは今後、内需が旺盛な国々が景気回復を主導すると予想しているが、リスク回避姿勢が優勢となっているため、全体的な消費は低迷する可能性がある。アジア全体の貿易の40%を占める地域間の貿易は、サプライチェーンの回復を促す可能性があるものの、その他の主要市場との貿易がアジアの外需の60%を占めている。パンデミックの影響によって主要貿易相手国の景気停滞が続けば、中国の経済成長も損なわれると予想する(新型コロナウイルス発生前において、中国経済の貿易セクターはGDPの38%を占めていた)。

アジアでは今後、内需が旺盛な国々が景気回復を主導すると予想している。
アウトルック

先進国市場:地域別レラティブ・バリュー

カナダ: 州債と社債のスプレッドは魅力的である。政策金利は低水準で推移する可能性があり、イールドカーブはすでにフラット化しているが、依然として右肩上がりの形状となっている。カナダのリアル・リターン・ボンドにも投資妙味がある。10年ブレークイーブン・インフレ率は0.50%であり、年初の水準から1%近く低下している。
米国: 経済活動を支援し、インフレ期待を高めるため、FRBは金利を据え置き、長期にわたり低金利政策を維持すると予想。したがって、イールドカーブの短期ゾーンに投資価値があるとの見方を維持する。
英国: 様々なニュース報道により、今後数カ月にわたり不安定な展開が見込まれるが、中期的に英ポンド安基調が続く見通し。
欧州: ECBの資産購入プログラムにより、パンデミックに対応した裁量的な財政刺激策のほとんどが吸収され、実質的にダウンサイド・リスクが抑えられると引き続き考えている。今後数カ月にわたり、政策に関する好材料が出てくれば、周辺国のスプレッドは支えられると予想。
日本: 日銀が意図しているとおり、イールドカーブ(特に超長期)はスティープ化すると予想。
オーストラリア: イールドカーブの中期ゾーン及び長期ゾーンに依然として注目している。また、スプレッドの継続的な縮小や新規発行の減少を踏まえ、準国債やSSA債(国際機関債、ソブリン債、及び政府系機関債など)といった格付けの高いセクターに投資価値があると見ている。
エマージング市場についてはセクター別レラティブ・バリュー参照
米国 経済活動は4~6月期に予想を下回ったが、重要なサービス産業(例えば、ヘルスケアやレストランなど)の回復を背景に、7~9月期には力強く回復すると予想。ただし、しばらくの間はソーシャル・ディスタンス対策が徹底される可能性があり、新型コロナウイルス危機から完全に脱却するには時間がかかると考える。
カナダ カナダ銀行は経済を下支えするため、政策金利を0.25%にまで引き下げ、同国としては初の量的緩和に着手した。連邦政府と州政府の両レベルで財政刺激策を実施し、新型コロナウイルスの感染拡大によって甚大な打撃を受けた業種を対象とした賃金助成プログラムなどを導入した。しかし、世界の原油市場の急落を受け、WCS原油の価格や生産量が大きな悪影響を受けている。これらが今後1~2年で回復するかは不明である。
欧州 2020年には深刻な景気後退に陥るが、2021年には経済が緩やかに回復すると予想。欧州中央銀行(ECB)は、金融政策の効果を浸透させるとともに、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響を抑えるために、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を拡大し、期間も延長している。「EU復興基金」の創設が検討されている中で、大規模な超国家的安全資産プールを設立することにより、欧州の財政政策が大きな一歩を踏み出すのは必至である。
英国 欧州連合との貿易交渉が始まると、ボラティリティがやや高まると予想。特に追加量的緩和の可能性が後退したように思われる中で、金融政策の見通しはタカ派寄りになっている。財政政策に関して、政府は追加の財政支出に意欲的であるように思われるが、設備投資促進(消費を促進するのではなく)への転換が成功するかどうかは不明である。
日本 前例のない規模の財政・金融刺激策が実施されていることを踏まえると、日本経済は2020年後半に回復すると予想。日銀は日本国債のイールドカーブ・スティープ化政策を通じて、長期にわたり金利を非常に低い水準に維持すると引き続き考えている。
オーストラリア オーストラリア準備銀行(RBA)によるイールドカーブ・コントロール政策は、短期ゾーンの金利を目標の0.25%前後に維持する上で効果的であった。地政学的リスクが高まり、米国で新型コロナウイルスの感染者数が増加する中で、10年債利回りは上下動を繰り返し、50 bps台半ばで4~6月期を終えた。

セクター別レラティブ・バリュー

投資適格社債
米国
見通し バリュエーションは依然として魅力的な水準で、需給環境は良好。下半期の新規発行は減少する一方だが、FRBの社債購入プログラムが価格の下支え要因として作用すると見られる。ファンドフローは資金流入超、為替のヘッジコストが低下している中で、海外投資家の利回りを求める動きが続いている。
レラティブ・バリュー + + 短期的には投資適格社債のオーバーウエイトを維持する。4~6月期を通じて特に高格付けの発行体を増やした。これらの発行体は、厳しい環境の中でも生き残れる堅固なフランチャイズ、健全なバランスシート、及び内部留保を有する企業である。
欧州
見通し 4~6月期に堅調なパフォーマンスとなったことから、バリュエーションの観点からすると、スプレッド水準はそれほど魅力的でないように見える。パンデミックへのエクスポージャーがほとんどない、または全くない銘柄は、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準近傍で取引されている。とは言うものの、中央銀行の債券購入プログラムは引き続き欧州の投資適格社債市場の支援材料となっている。
レラティブ・バリュー +/- REITや金融セクターのクレジット・ファンダメンタルズは堅調に推移しており、バリュエーションは依然として一定の投資機会を提供している。英ポンド建ての社債は低調な新規発行から恩恵を受けている。ユーロ建て及び英ポンド建ての社債をオーバーウエイトとしている。
オースト ラリア
見通し オーストラリアでは、直接の債券購入プログラムを実施していないため、社債市場は当初こそ戻りが鈍かったものの、オーストラリア準備銀行(RBA)による社債に対するレポ条件の変更や、オフショア市場における動きにより、最終的にスプレッドは縮小した。継続的な政策支援や、利回りに対する投資家の需要を背景に、投資適格社債は引き続きアウトパフォームすると予想。
レラティブ・バリュー - やや長いスプレッド・デュレーションについてはエクスポージャーを有するセクターのオーバーウエイトを維持する。しかし支援プログラムは経済に恩恵をもたらすものの、V字型の景気回復を予想していないため、リスク水準については慎重なコントロールが必要と考える。
ハイ・イールド社債
米国
見通し 新型コロナウイルスの感染者数の再拡大や、経済を安定化させる能力、及び間近に迫っている大統領選挙は、今後の市場の方向性を左右する主な要因である。新規発行額の減少、投資家の繰延べ需要、ハイ・イールド証券の購入に対するFRBのコミットメントを受け、需給環境は依然として良好である。
レラティブ・バリュー + 4~6月期には、クルーズ船、旅客航空輸送業、及び小売などのセクターで大幅にディスカウントされた証券を割安な水準で購入した。金融、消費者サービス、及び担保付きに限定して旅客航空輸送業などのセクターをオーバーウエイトとしている。新規発行の条件が有利になると考えられ、引き続き新発債市場での投資機会に着目している。
欧州
見通し スプレッドは4~6月期に縮小し、2016年初めや2018年後半と同等の水準となった。デフォルト率は当初懸念された水準を下回る可能性があり、企業は流動性の改善に積極的。これに加えて、経済活動の回復により、リスクプレミアムは時間の経過とともにさらに縮小すると見ている。
レラティブ・バリュー + BB格の銘柄よりもコーポレート・ハイブリッド証券を選好する。B格以下の銘柄については、ディフェンシブな業種(ヘルスケア、通信/ケーブル)や、景気変動の影響を受けやすいセクターの中では豊富な流動性を有する企業を選好する。
バンクローン
米国
見通し CLOの発行に伴ってローンの需要が増加しており、このことは短期的にローン市場の上昇要因になると予想される。さらに、ローンの限定的な新規発行や、ローンの返済(投資家はこの資金を流通市場に再投資する)により上昇が加速すると見込まれる。ローン市場は、高格付けクレジット、B格の銘柄、及び景気循環消費財銘柄/新型コロナウイルスのリスクが高い銘柄の3つに引き続き分かれると予想。
レラティブ・バリュー + ディフェンシブ・セクターは順調に回復しているが、経済活動の停止に伴う不透明感を踏まえると、生活必需品、ヘルスケア、及び通信などのセクターはより良好なリスク・リターン特性を提供すると考える。
CLO
米国
見通し 投資適格部分のCLOは予想通り4~6月期に反発し、良好なマクロ経済環境やFRBの政策措置により押し上げられた。バンクローンのスプレッドが縮小し、3月の水準から7割程縮小する中、CLOトランシェもその動きに追随した。新型コロナウイルスの第2波の影響が続き、広範囲にわたり経済活動が停止されることで、回復見通しが先送りとなった場合、低格付けのCLOトランシェにおいてボラティリティが高まる恐れがある。
レラティブ・バリュー + AAA格のCLOのスプレッドは、今年の最も縮小していた水準と比べると、依然として60%以上拡大した水準にあり、他の同等格付けの債券資産よりも大きなスプレッド・プレミアムを提供している。AAA格のCLOは、弱気/強気シナリオのどちらでも良好なパフォーマンスを示すと予想。BB格/BBB格のCLOも、現在のバリュエーションを踏まえると、魅力的なトータル・リターンが期待される。
ストラクチャード・プロダクト
エージェンシーMBS
見通し 現在のバリュエーションや、FRBの継続的な資産買い入れなどを踏まえ、モーゲージに対して中立。
レラティブ・バリュー +/- カレント・クーポンのTBA取引や、高クーポンの特定プールを選好する。
ノン・エージェンシーRMBS
見通し 新型コロナウイルスをめぐる不透明感は残っているが、今回の危機が発生する前までは、住宅市場は健全であった。規制当局やFRBが迅速な政策対応を行ったため、差し押さえの急増が阻止され、住宅市場への資金流入が維持された。
レラティブ・バリュー + レガシー・ノン・エージェンシーRMBS/新規発行のリパフォーミング・ローン案件(一時的に返済が滞納となっていたものの、再度返済が開始されたローン)を選好。これらについては、借り手の多くが同様の混乱(世界金融危機やハリケーン被害など)をすでに乗り越えたと見ている。
ノン・エージェンシーCMBS
見通し 商業用不動産市場が今回のパンデミックの悪影響からいつ完全に回復するかわからないため、短期的には慎重な姿勢を維持する。新型コロナウイルスによる影響は物件タイプや地域によって異なるため、ファンダメンタル見通しも物件タイプや市場によって異なると予想。
レラティブ・バリュー +/- デュレーションが短く、構造がしっかりとした単一借り手の証券化商品及びローンに対して強気の見方を維持する。営業収入の減少に上手く耐えることができる発行体の債券を選好する。
資産担保証券(ABS)
見通し 消費者のファンダメンタルズに対して慎重な見方を維持しており、経済に対する新型コロナウイルスの影響や不透明な回復ペースを踏まえ、消費者ABSセクターのクレジット・パフォーマンスを注視する。
レラティブ・バリュー +/– ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)で認められる裏付け資産(自動車ローン、クレジット・カードローン、設備ローン、及び学生ローンなど)のABS且つシニアトランシェを選好。
インフレ連動債
米国
見通し コアCPIのデフレ状況はすでに過去ものとなっているが、足元でディスインフレが進行している。エネルギー価格は年末に向けてやや上昇すると予想されるが、大量の在庫がしばらくの間、ダウンサイド・リスクになり得る。FRBの政策は、目標インフレの達成、インフレ期待の定着に苦労するであろう。
レラティブ・バリュー + 引き続き、イールドカーブ全体にわたり、名目米国債よりもインフレ連動債(TIPS)の方が魅力的。長期のブレーク・イーブン取引の注目を継続。5年物フォワードBEIは1.5%であり、新型コロナウイルス発生前の水準を20 bps下回っている。
欧州
見通し インフレ率は過去の水準を下回って推移する可能性があるが、景気回復の兆候が明らかになれば、現在の非常に低いブレーク・イーブン・インフレ率によって示唆される水準を上回ると予想。ECBによるインフレ連動債の購入は短期的なサポートを提供すると考える。
レラティブ・バリュー + インフレ連動債のポートフォリオとグローバルのポートフォリオでは、フランスとイタリアの実質利回りとブレーク・イーブン・インフレ率スプレッドを維持する。
日本
見通し 日本のブレーク・イーブン・インフレ率スプレッドは0%を下回った。組み込まれたフロア・オプションを考慮すると、日本のインフレ連動債は大幅に過小評価されている。ただし、財務省と日銀が買い戻し額を増やしており、発行量も削減されているため、過小評価は徐々に是正されると考える。
レラティブ・バリュー + 日本では名目利回りに対する実質利回りのオーバーウエイトを維持する。
地方債
米国
見通し 経済活動の縮小により、税収が落ち込み、これにより州や地方自治体レベルで緊縮財政が実施される可能性がある。貧困に喘ぐ地方自治体の打撃の程度はケースバイケースであり、最終的には地域の経済活動停止の期間や、連邦政府の支援の水準により決まると考えられる。ネガティブな報道や格下げの増加は、ファンドからの資金流入、クロスオーバーの買い手、季節的に高いクーポン水準や元本の再投資による良好な市場需給により軽減されると予想。
レラティブ・バリュー + 高格付けの地方債や一般財源保証債が、低格付けの地方債やレベニュー債をアウトパフォームすると予想。低格付けの投資適格レベニュー債では、運輸セクターやヘルスケア・セクターを選好する。デフォルトは低水準で推移し、ハイ・イールド債セグメントに集中すると予想。
エマージング債
米ドル建て
エマージング
ソブリン債
見通し 新型コロナウイルスや原油価格の乱高下によるエマージング諸国の経済成長への影響はまだ終わっていない。エマージング市場では、先進国市場と比較して大規模な金融・財政刺激策を実施する余地が限られていることから、新型コロナウイルス危機による影響が長引く可能性がある。さらなる経済的打撃を抑える上で財政プログラムの資金を調達する必要がある中で、米ドル建てソブリン債の発行がすでに増加している状況が見られる。
レラティブ・バリュー +/- 一部の投資適格級の米ドル建てエマージング・ソブリン債は、キャリー及びトータル・リターンの両方の観点から見て魅力的であるが、非投資適格級に格下げされるリスクを警戒している。ハイ・イールド及びフロンティア市場のソブリン債についても格下げリスクが高まっており、市場へのアクセスが困難となるリスクもある。
現地通貨建て
エマージング債
見通し ロックダウン(都市封鎖)措置により輸入が抑えられていることから、エマージング諸国の対外収支は引き続き改善している。エマージング各国の中央銀行は緩和的な姿勢を維持しており、通貨安にもかかわらず、経済活動を支援し、デフレを阻止するために追加緩和を進めると考えられる。
レラティブ・バリュー +/- 現地通貨建て債券を選好する一方で、エマージング通貨に対して概して慎重な姿勢を維持する。エマージング通貨は依然として新型コロナウイルスによるボラティリティの影響を受けやすい。 実質金利が高いため、現地通貨建てエマージング債への投資はトータル・リターンというよりも、キャリーを獲得する機会であると見ている。
エマージング社債
見通し エマージング社債はレバレッジが低く、バランスシートの管理も保守的であるため、世界のクレジット・ユニバースの中では比較的ディフェンシブなセクターであるとの見方を維持する。EMの企業は比較的償還スケジュールが明確であり、流動性を確保しているため、それらの企業はコストカット、リボルビング・ローン、オポチュニスティックな新規発行などを通じてさらに体力を強化する可能性がある。
レラティブ・バリュー +/- 投資適格社債やクロスオーバー社債の新発銘柄を上手く活用している。これらの新発債のスプレッドは米国の社債に対して大幅に拡大している。景気循環/コモディティへのエクスポージャーを有するB格のエマージング社債、または新型コロナウイルのリスクに対する脆弱性が高まっている地域については慎重な姿勢を維持する。
見通し レラティブ・バリュー
投資適格社債
米国 バリュエーションは依然として魅力的な水準で、需給環境は良好。下半期の新規発行は減少する一方だが、FRBの社債購入プログラムが価格の下支え要因として作用すると見られる。ファンドフローは資金流入超、為替のヘッジコストが低下している中で、海外投資家の利回りを求める動きが続いている。 + + 短期的には投資適格社債のオーバーウエイトを維持する。4~6月期を通じて特に高格付けの発行体を増やした。これらの発行体は、厳しい環境の中でも生き残れる堅固なフランチャイズ、健全なバランスシート、及び内部留保を有する企業である。
欧州 4~6月期に堅調なパフォーマンスとなったことから、バリュエーションの観点からすると、スプレッド水準はそれほど魅力的でないように見える。パンデミックへのエクスポージャーがほとんどない、または全くない銘柄は、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準近傍で取引されている。とは言うものの、中央銀行の債券購入プログラムは引き続き欧州の投資適格社債市場の支援材料となっている。 +/- REITや金融セクターのクレジット・ファンダメンタルズは堅調に推移しており、バリュエーションは依然として一定の投資機会を提供している。英ポンド建ての社債は低調な新規発行から恩恵を受けている。ユーロ建て及び英ポンド建ての社債をオーバーウエイトとしている。
オースト ラリア オーストラリアでは、直接の債券購入プログラムを実施していないため、社債市場は当初こそ戻りが鈍かったものの、オーストラリア準備銀行(RBA)による社債に対するレポ条件の変更や、オフショア市場における動きにより、最終的にスプレッドは縮小した。継続的な政策支援や、利回りに対する投資家の需要を背景に、投資適格社債は引き続きアウトパフォームすると予想。 - やや長いスプレッド・デュレーションについてはエクスポージャーを有するセクターのオーバーウエイトを維持する。しかし支援プログラムは経済に恩恵をもたらすものの、V字型の景気回復を予想していないため、リスク水準については慎重なコントロールが必要と考える。
ハイ・イールド社債
米国 新型コロナウイルスの感染者数の再拡大や、経済を安定化させる能力、及び間近に迫っている大統領選挙は、今後の市場の方向性を左右する主な要因である。新規発行額の減少、投資家の繰延べ需要、ハイ・イールド証券の購入に対するFRBのコミットメントを受け、需給環境は依然として良好である。 + 4~6月期には、クルーズ船、旅客航空輸送業、及び小売などのセクターで大幅にディスカウントされた証券を割安な水準で購入した。金融、消費者サービス、及び担保付きに限定して旅客航空輸送業などのセクターをオーバーウエイトとしている。新規発行の条件が有利になると考えられ、引き続き新発債市場での投資機会に着目している。
欧州 スプレッドは4~6月期に縮小し、2016年初めや2018年後半と同等の水準となった。デフォルト率は当初懸念された水準を下回る可能性があり、企業は流動性の改善に積極的。これに加えて、経済活動の回復により、リスクプレミアムは時間の経過とともにさらに縮小すると見ている。 + BB格の銘柄よりもコーポレート・ハイブリッド証券を選好する。B格以下の銘柄については、ディフェンシブな業種(ヘルスケア、通信/ケーブル)や、景気変動の影響を受けやすいセクターの中では豊富な流動性を有する企業を選好する。
バンクローン
米国 CLOの発行に伴ってローンの需要が増加しており、このことは短期的にローン市場の上昇要因になると予想される。さらに、ローンの限定的な新規発行や、ローンの返済(投資家はこの資金を流通市場に再投資する)により上昇が加速すると見込まれる。ローン市場は、高格付けクレジット、B格の銘柄、及び景気循環消費財銘柄/新型コロナウイルスのリスクが高い銘柄の3つに引き続き分かれると予想。 + ディフェンシブ・セクターは順調に回復しているが、経済活動の停止に伴う不透明感を踏まえると、生活必需品、ヘルスケア、及び通信などのセクターはより良好なリスク・リターン特性を提供すると考える。
CLO
米国 投資適格部分のCLOは予想通り4~6月期に反発し、良好なマクロ経済環境やFRBの政策措置により押し上げられた。バンクローンのスプレッドが縮小し、3月の水準から7割程縮小する中、CLOトランシェもその動きに追随した。新型コロナウイルスの第2波の影響が続き、広範囲にわたり経済活動が停止されることで、回復見通しが先送りとなった場合、低格付けのCLOトランシェにおいてボラティリティが高まる恐れがある。 + AAA格のCLOのスプレッドは、今年の最も縮小していた水準と比べると、依然として60%以上拡大した水準にあり、他の同等格付けの債券資産よりも大きなスプレッド・プレミアムを提供している。AAA格のCLOは、弱気/強気シナリオのどちらでも良好なパフォーマンスを示すと予想。BB格/BBB格のCLOも、現在のバリュエーションを踏まえると、魅力的なトータル・リターンが期待される。
ストラクチャード・プロダクト
エージェンシーMBS 現在のバリュエーションや、FRBの継続的な資産買い入れなどを踏まえ、モーゲージに対して中立。 +/- カレント・クーポンのTBA取引や、高クーポンの特定プールを選好する。
ノン・エージェンシーRMBS 新型コロナウイルスをめぐる不透明感は残っているが、今回の危機が発生する前までは、住宅市場は健全であった。規制当局やFRBが迅速な政策対応を行ったため、差し押さえの急増が阻止され、住宅市場への資金流入が維持された。 + レガシー・ノン・エージェンシーRMBS/新規発行のリパフォーミング・ローン案件(一時的に返済が滞納となっていたものの、再度返済が開始されたローン)を選好。これらについては、借り手の多くが同様の混乱(世界金融危機やハリケーン被害など)をすでに乗り越えたと見ている。
ノン・エージェンシーCMBS 商業用不動産市場が今回のパンデミックの悪影響からいつ完全に回復するかわからないため、短期的には慎重な姿勢を維持する。新型コロナウイルスによる影響は物件タイプや地域によって異なるため、ファンダメンタル見通しも物件タイプや市場によって異なると予想。 +/- デュレーションが短く、構造がしっかりとした単一借り手の証券化商品及びローンに対して強気の見方を維持する。営業収入の減少に上手く耐えることができる発行体の債券を選好する。
資産担保証券(ABS) 消費者のファンダメンタルズに対して慎重な見方を維持しており、経済に対する新型コロナウイルスの影響や不透明な回復ペースを踏まえ、消費者ABSセクターのクレジット・パフォーマンスを注視する。 +/– ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)で認められる裏付け資産(自動車ローン、クレジット・カードローン、設備ローン、及び学生ローンなど)のABS且つシニアトランシェを選好。
インフレ連動債
米国 コアCPIのデフレ状況はすでに過去ものとなっているが、足元でディスインフレが進行している。エネルギー価格は年末に向けてやや上昇すると予想されるが、大量の在庫がしばらくの間、ダウンサイド・リスクになり得る。FRBの政策は、目標インフレの達成、インフレ期待の定着に苦労するであろう。 + 引き続き、イールドカーブ全体にわたり、名目米国債よりもインフレ連動債(TIPS)の方が魅力的。長期のブレーク・イーブン取引の注目を継続。5年物フォワードBEIは1.5%であり、新型コロナウイルス発生前の水準を20 bps下回っている。
欧州 インフレ率は過去の水準を下回って推移する可能性があるが、景気回復の兆候が明らかになれば、現在の非常に低いブレーク・イーブン・インフレ率によって示唆される水準を上回ると予想。ECBによるインフレ連動債の購入は短期的なサポートを提供すると考える。 + インフレ連動債のポートフォリオとグローバルのポートフォリオでは、フランスとイタリアの実質利回りとブレーク・イーブン・インフレ率スプレッドを維持する。
日本 日本のブレーク・イーブン・インフレ率スプレッドは0%を下回った。組み込まれたフロア・オプションを考慮すると、日本のインフレ連動債は大幅に過小評価されている。ただし、財務省と日銀が買い戻し額を増やしており、発行量も削減されているため、過小評価は徐々に是正されると考える。 + 日本では名目利回りに対する実質利回りのオーバーウエイトを維持する。
地方債
米国 経済活動の縮小により、税収が落ち込み、これにより州や地方自治体レベルで緊縮財政が実施される可能性がある。貧困に喘ぐ地方自治体の打撃の程度はケースバイケースであり、最終的には地域の経済活動停止の期間や、連邦政府の支援の水準により決まると考えられる。ネガティブな報道や格下げの増加は、ファンドからの資金流入、クロスオーバーの買い手、季節的に高いクーポン水準や元本の再投資による良好な市場需給により軽減されると予想。 + 高格付けの地方債や一般財源保証債が、低格付けの地方債やレベニュー債をアウトパフォームすると予想。低格付けの投資適格レベニュー債では、運輸セクターやヘルスケア・セクターを選好する。デフォルトは低水準で推移し、ハイ・イールド債セグメントに集中すると予想。
エマージング債
米ドル建て
エマージング
ソブリン債
新型コロナウイルスや原油価格の乱高下によるエマージング諸国の経済成長への影響はまだ終わっていない。エマージング市場では、先進国市場と比較して大規模な金融・財政刺激策を実施する余地が限られていることから、新型コロナウイルス危機による影響が長引く可能性がある。さらなる経済的打撃を抑える上で財政プログラムの資金を調達する必要がある中で、米ドル建てソブリン債の発行がすでに増加している状況が見られる。 +/- 一部の投資適格級の米ドル建てエマージング・ソブリン債は、キャリー及びトータル・リターンの両方の観点から見て魅力的であるが、非投資適格級に格下げされるリスクを警戒している。ハイ・イールド及びフロンティア市場のソブリン債についても格下げリスクが高まっており、市場へのアクセスが困難となるリスクもある。
現地通貨建て
エマージング債
ロックダウン(都市封鎖)措置により輸入が抑えられていることから、エマージング諸国の対外収支は引き続き改善している。エマージング各国の中央銀行は緩和的な姿勢を維持しており、通貨安にもかかわらず、経済活動を支援し、デフレを阻止するために追加緩和を進めると考えられる。 +/- 現地通貨建て債券を選好する一方で、エマージング通貨に対して概して慎重な姿勢を維持する。エマージング通貨は依然として新型コロナウイルスによるボラティリティの影響を受けやすい。 実質金利が高いため、現地通貨建てエマージング債への投資はトータル・リターンというよりも、キャリーを獲得する機会であると見ている。
エマージング社債 エマージング社債はレバレッジが低く、バランスシートの管理も保守的であるため、世界のクレジット・ユニバースの中では比較的ディフェンシブなセクターであるとの見方を維持する。EMの企業は比較的償還スケジュールが明確であり、流動性を確保しているため、それらの企業はコストカット、リボルビング・ローン、オポチュニスティックな新規発行などを通じてさらに体力を強化する可能性がある。 +/- 投資適格社債やクロスオーバー社債の新発銘柄を上手く活用している。これらの新発債のスプレッドは米国の社債に対して大幅に拡大している。景気循環/コモディティへのエクスポージャーを有するB格のエマージング社債、または新型コロナウイルのリスクに対する脆弱性が高まっている地域については慎重な姿勢を維持する。