世界的な不確実性が続く中で、 当社は慎重ながらも前向きな見通しを維持している。米国の底堅い経済成長、中国の政策主導の景気回復、先進国市場のインフレ圧力の緩和などを背景に、選別的な投資機会が生まれている。魅力的な利回りやクレジット・ファンダメンタルズの改善を受け、金融・財政環境が変化する中で、当社はファンダメンタルズが比較的良好なセクターを見極め、規律あるバリュー投資に引き続き注力している。
- 労働市場が軟化しているものの、米国経済は底堅く推移している。一方、インフレ率は米連邦準備制度理事会(FRB)の目標を上回っているが、財政・金融政策の支援により、2026年にかけて鈍化すると予想される。
- 欧州と英国は貿易摩擦の悪影響を受けているが、インフレ圧力の緩和や利下げ期待を背景に、良好な投資環境が続いている。
- 中国では、当局の政策支援や好調な輸出により、景気回復が進んでいるものの、構造的な問題が依然として残っている。日本では、根強いインフレ圧力を受け、追加利上げが実施される可能性がある。
- カナダとオーストラリアでは、物価上昇圧力の緩和や中央銀行の柔軟な政策運営により、成長見通しが改善している。
- 世界的に、投資適格社債とハイ・イールド社債のファンダメンタルズは堅調で、旺盛な投資需要が存在する。銀行、通信、エネルギーの各セクターには選別的な投資機会がある。
- モーゲージ担保証券(MBS)やローン担保証券(CLO)などの証券化商品は引き続き魅力的な利回りを提供している。一方、消費者ローンABSについては、学生ローンの返済再開や労働市場の軟化を受け、下押し圧力がかかっている。
- グローバル大手銀行、銅関連セクター、エネルギー産業の中流部門、運輸セクターを選好する。小売り、公益セクター、低格付けの消費者ローン・クレジットには慎重な姿勢を維持する。
- マクロ経済や政策をめぐる不確実性が続いているものの、魅力的な利回りやファンダメンタルズの改善を受け、投資家心理が改善している。
概要
世界的な不確実性が続く中で、ウエスタン・アセットは慎重ながらも前向きな見通しを維持している。労働市場が軟化し、インフレ率がFRBの目標を上回っているものの、米国経済は底堅く推移しており、財政・金融政策の支援により、2026年には潜在成長率近くまで回復すると見込まれる。欧州と英国は、貿易摩擦による悪影響を受けているが、インフレ圧力の緩和や利下げ期待を背景に、景気が下支えされている。中国では、当局の政策支援により、景気回復が進んでいるものの、構造的な問題が依然として残っている。日本では、根強いインフレ圧力を受け、追加利上げが実施される可能性がある。カナダとオーストラリアでは、物価上昇圧力の緩和や中央銀行の柔軟な政策運営により、経済環境が好転している。魅力的な利回りやクレジット・ファンダメンタルズの改善を受け、投資家心理が改善している。米国のイールドカーブはスティープ化しており、これは米国債の増発や財政悪化懸念を背景にタームプレミアム(上乗せ金利)が上昇していることを反映している。様々な要因が交錯する中でも、当社はファンダメンタルズが比較的良好なセクターを見極め、魅力的な投資機会を見出している。また、投資規律を遵守しつつ、バリュー重視の運用アプローチを採用している。
世界の主要国・地域の経済はそれぞれ異なる局面を迎えている。米国では経済が底堅く推移しており、中国では政策主導の景気回復が進んでおり、欧州ではインフレ圧力が緩和しつつある。こうした中で、当社はリスクを慎重に見極め、確信をもって判断しつつ、地域ごとに投資方針を定めている。ファンダメンタルズが良好で、政策環境が改善し、なおかつバリュエーションが割安な市場に注目しており、相対的に投資妙味が高い分野に戦略的に投資を行っている。
主要ファクターと地域別レラティブバリュー
米国
労働市場が弱含んで いるが、2026年には政策面での支援が期待される
FRBと投資家は、労働市場の弱含みと、それが経済成長に及ぼす影響に注目している。2025年には経済が潜在成長率を下回る可能性が高いと考えられる一方、2026年にかけて明るい材料が増える見通しである。財政・金融政策の支援により、2026年には経済が潜在成長率近くまで回復すると見込まれる。インフレ率がFRBの目標である2%を依然として上回っている中で、当社はポートフォリオのデュレーションを中立近辺に維持するとともに、イールドカーブのスティープ化を想定したポジションを取っている。一部のスプレッド・セクターについては、バリュエーションの割高感を踏まえ、投資比率を引き下げた。
欧州
欧州は労働市場の軟 化や貿易摩擦の悪影 響を受ける可能性が ある
ユーロ圏経済については前向きな見通しを維持しているが、依然として課題は残っている。上半期には、関税導入前の駆け込み需要により、経済成長が押し上げられた。ただし、今後は駆け込み需要の反動が懸念される。米国との貿易協定が締結されたものの、景況感の改善には至っていない。また、貿易面で中国との激しい競争が続いている。労働市場は依然として健全であるものの、ドイツやフランスでは失業率が上昇している。以上を踏まえ、デュレーションの小幅オーバーウエイトを維持する一方で、ユーロをロング・ポジションとしている。
英国
イングランド銀行は、市場が現在織り込んでいるよりも大幅な利下げを行う見通し
英国経済は今後数四半期にわたり潜在成長率を下回る成長にとどまると予想され、労働市場がさらに減速するリスクもある。賃金の伸びが鈍化しているため、インフレ圧力の緩和が続く見通し。リーブス財務相は11月の予算案で増税を打ち出すと予想されており、こうした財政引き締めもインフレ圧力の緩和につながる見込みである。2026年の見通しを踏まえると、市場はイングランド銀行の利下げを十分に織り込んでいないと考えられる。
エマージング市場については、ファンダメンタルズが改善している一方で、バリュエーションに割高感が見られるため、投資先を厳選する方針である。高格付けのソブリン債と社債については、政策改革の進展やバランスシートの健全性などを踏まえ、前向きな見方を維持する。世界的な不確実性が続く中でも、エマージング債は、高水準な利回り、国際通貨基金(IMF)の支援による経済・財政の安定化、各国固有の信用要因など、分散効果が期待できる魅力的な収益源泉であると当社は見ている。
ウエスタン・アセットのセクター別テーマ
投資適格社債
ハイ・イールド社債
バンクローン
業種全体を見渡すと、インフレ、政策動向、および消費者の行動により、企業業績への影響がまちまちとなる中で、ファンダメンタルズには引き続きばらつきが見られる。銀行、エネルギー、および公益などのセクターでは底堅さが見られ、健全なバランスシートや規律ある資本管理に支えられている。 一方、ヘルスケアおよび通信セクターでは選別的な投資機会が現れ、イノベーションとコスト削減により、消費動向に敏感なセクターや製造業セクターでは、景気循環の軟化が相殺されている。