2024年4月 ~6月期

市場概況:The Big Picture

経済動向やクレジット市場に関するウエスタン・アセットの最新の見解をご提供いたします。

『市場概況:The Big Picture』では、世界経済情勢と債券市場への影響について詳細な分析を行います。国・地域別の主要な経済的要因、金融政策、および市場動向などを明らかにし、債券市場における潜在的な投資機会を特定します。現在の複雑な金融環境において、投資家が十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるよう、有用な情報をご提供いたします。

マイケル C. ブキャナン
共同最高投資責任者(Co-CIO)
要約
  • 米国では、経済成長とインフレが減速しているかという点に、債券利回りは敏感に反応すると考えられる。米連邦準備制度理事会(FRB)は今年後半に利下げに踏み切ると予想されており、その場合には債券利回りに低下圧力がかかると見込まれる。
  • 欧州では、ディスインフレ傾向が鮮明になりつつあり、欧州中央銀行(ECB)は6月の政策理事会で最初の利下げを開始する可能性が高まっている。
  • 英国では、イングランド銀行(BoE)は利下げに近づいており、6月に開始される可能性が最も高いと考えられている。
  • 中国経済は向かい風に直面しており、政策当局は緩和的な金融政策スタンスを維持すると考えられる。

世界的な経済成長は鈍化し、世界のインフレ率も概ね後退している。中国のデフレ圧力、欧米の金融引き締め、多くの国での製造業とサービス業の需要低下などを背景に、世界的なインフレ上昇圧力は緩和されつつある。こうした傾向は、主要中銀が慎重かつ段階的な金融緩和策を推進していることと相まって、世界経済の成長とインフレをさらに抑制し、ひいては先進国国債利回りの低下と小幅な米ドル安につながると予想される。ただし、金融政策が失敗する懸念や、インフレ率が中銀の目標を上回って安定しつつあること、米国の経済成長が予想以上に強いこと、財政赤字拡大を補うため米国債が増発されていることなどは、いずれも市場ボラティリティの上昇局面につながる可能性がある。エマージング債券、ハイ・イールド社債、バンクローン、MBS(モーゲージ担保証券)の一部といったスプレッド・セクターは、魅力的な利回りを提供しているが、マクロ環境に対するセンチメントの予期せぬ変化や、地政学的動向、政策金利の道筋に関する不確実性に対して脆弱であると認識している。

今年は各国の中央銀行の動向に注目が集まっています。米国、欧州、英国、カナダでは年内の利下げ、中国では金融緩和の継続が見込まれています。当社はアクティブ運用会社として、マクロ経済環境が改善する中で様々な投資機会を見出しており、今後も債券投資家にバリュー(価値)を提供できると考えています。

マーク S. リンドブルーム
ブロード・マーケット部門統括責任者

主要ファクターと地域別レラティブバリュー


米国: ソフトランディングが見込まれる


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米国では、貯蓄率がコロナ禍前の水準に戻りつつある中で、需要が鈍化すると予想される。物価や住居費の伸びが鈍化しているため、コアインフレ率はFRBの目標水準に向けて低下すると見込まれる。コロナ禍前の経済成長率やインフレ率と比べて、米国債利回りは高止まりしている。米国の経済成長やインフレが緩やかになるかどうかに、債券利回りは引き続き敏感に反応しやすい。FRBは年内に利下げに踏み切ると予想され、その場合には債券利回りに低下圧力がかかると見込まれる。


欧州: 6月のECB政策理事会に注目が集まっている


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ECBによると、インフレ率は目標水準に達すると考えられている。コアインフレ率がさらに低下し、賃金の伸びが鈍化すれば、インフレ率に対するそうした見方がさらに強まると考えられる。当社は2023年10月~12月期にエクスポージャーを縮小したが、最近ではドイツ5年国債とドイツ7年インフレ連動国債を用いてデュレーションをやや長期化し始めた。


英国: 利下げ開始時期が近づいている


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労働市場はさらに軟化しており、先行指標を見る限り、経済活動は弱含みで推移すると見込まれる。インフレの鈍化傾向が続くと予想され、2024年4月~6月期にはインフレ率が2%を下回る可能性がある。BoEの利下げ開始時期と利下げ回数が注目されている。当社の見通しを踏まえると、市場は今後の利下げを依然として過小評価している可能性がある。英国債はプラスのリターンを生み出す可能性がある。


ハイ・イールド社債、バンクローン、およびローン担保証券(CLO)についてはスプレッドが魅力的な水準にあり、ファンダメンタルズも堅調であることから、当社は引き続き投資妙味が高いと考えています。ハイ・イールド社債は利回り水準が非常に魅力的であり、信用力が高いまたは改善している発行体を選好することで、収益機会を追求します。

ウォルター E. キルカーレン
米国ハイ・イールド債統括責任者

ウエスタン・アセットのセクター別テーマ

投資適格社債


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米国では、企業の利益率やレバレッジは直近のピークは下回っているものの、安定しており、企業のファンダメンタルズは底堅く推移している。スプレッドはレンジの中でタイトな水準にあり、すでにソフトランディングを織り込んでいる。したがって、ネガティブ・サプライズに対するクッションはあまり残されていない。

+/–
欧州では、景気が鈍化しているにもかかわらず、投資適格社債のファンダメンタルズは比較的堅調さを維持している。スプレッドは1月~3月期も縮小し、過去の平均と比べてやや縮小した水準にある。

+
オーストラリアでは、景気鈍化見通しにもかかわらず、ファンダメンタルズは依然として健全な状況で推移している。当社ではクレジットのオーバーウエイトを維持、特に短期の銘柄を選好しており、業種については一部のREITと規制に守られた経営を行っている公益およびインフラ・セクターを選好している。また、無担保の金融シニア債や、海外の大手銀行の新発債も選好している。

ハイ・イールド社債


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米国ハイ・イールド社債のスプレッドは、健全なファンダメンタルズと需給環境を反映している。当社は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不況からまだ回復途上にあるサービス関連セクター(航空、クルーズ船、およびホテルなど経済活動を再開した業種)や、ライジングスターの候補銘柄に引き続き、投資機会を見出している。消費や小売り、住宅建設関連は注視している。

+/–
欧州では最近の企業業績を見る限り、企業のファンダメンタルズは概ね健全である。新規発行銘柄については投資先を厳選し、BB格/B格の銘柄に注目。一方、特定の景気循環セクター(化学、建設資材、包装)や借り換えニーズが高い企業に対しては慎重な姿勢を維持している。

バンクローン


+
バンクローンのスプレッドは比較的魅力的である。景気循環消費財セクターの一部により投資機会があると考える一方、資本財セクターや通信セクターに対してはより慎重とする。コール価格を下回る水準で取引されている企業を重視する。

当社は自動車セクターの投資機会に注目しています。また、カジノ・セクターも堅調に推移すると予想しています。通信・メディア・セクターでは競争が激化しているものの、基本的に前向きな見方を維持しています。全体として、すべての業種にわたり投資機会が存在するものの、適切な投資判断を行うためには包括的な分析が必要と考えます。

アナベル・ルドベック
グローバル投資適格社債運用チーム統括責任者
ポートフォリオ・マネージャー

ウエスタン・アセットのサブセクター別テーマ

セクター
主な見通し

自動車関連

  • 中立の見通しを維持しており、やや強気バイアスとしている。
  • 全米自動車労働組合(UAW)のストライキの収束、健全な労働市場、需要と供給の均衡などがプラス要因。

銀行

  • 底堅い業績を上げているグローバルの大手銀行を大幅にオーバーウエイト。
  • 規制の厳格化、監視機能の強化、世界金融危機以降のリスク管理体制の充実などにより、銀行のリスク特性は改善。

エネルギー

  • キャリーに着目して投資しているが、トータル・リターン狙うことも可能と考える。
  • 世界経済の成長減速に伴い石油需要は鈍化しているが、OPECプラスの減産、地政学的リスクの高まりを受け、原油価格に上昇圧力がかかっている。