世界経済は、欧州、英国、中国に牽引され、引き続き減速している。米国は、成長がさらに鈍化しながらも、景気後退は依然回避されると予想している。インフレは、多くの国で製造業とサービス業の需要が弱まり、中国でデフレ圧力が高まっているため、物価上昇圧力は世界的に緩和されつつある。こうした傾向は、主要中銀による金融引き締めの累積効果と相まって、世界経済の成長とインフレをさらに抑制し、ひいては先進国の国債利回りの低下と小幅な米ドル安につながると予想される。また、こうしたマクロ環境は、新興国、特に中南米諸国の支援材料となるため、市場をアウトパフォームすると予想している。ハイ・イールド、バンクローン、MBS(モーゲージ担保証券)の一部などのスプレッド・セクターは魅力的な利回りを提供しているが、中央銀行の政策、マクロ環境に対するセンチメント、地政学的動向等の予期せぬ変化に対して脆弱とみている。予想を上回る米国の経済成長や、増大する財政赤字を賄うための米国債の供給増加、各国中銀の目標水準を上回るインフレ率などの要因を背景に、金利環境に対する「高金利の長期化」懸念が長引くことも、市場ボラティリティの上昇局面につながる可能性がある。

以下では、当社の世界経済の見通しの主な背景およびグローバル債券市場の中で投資妙味が高いセクターを考察する。

主要ファクター
米国:インフレ率の鈍化を受け、FRBは予想を上回る利下げを実施する可能性
US Recovery
2024年後半にはインフレ率がFRBの目標を大幅に下回ると予想している。

米国では、ほぼ建設活動の回復のみで、2023年の経済成長は改善した。堅調な個人消費も景気改善に寄与した。ただし、2023年のサービスの個人消費は2022年ほど伸びなかった。また、財の個人消費は改善したものの、在庫投資の減少により相殺された。市場では、2024年の建設活動が堅調に推移するとの楽観的な見方が広がっている。連邦政府の刺激策の効果が薄れる中で、非住宅建設の鈍化が見込まれる。さらに、新築住宅の売れ残り在庫が高水準で推移しており、住宅ローン金利や住宅価格の上昇で需要が抑えられているため、住宅建設も減速する恐れがある。名目支出の伸びも徐々に鈍化しており、このことも2024年のインフレ率の下押し圧力になると考えられる。以上を踏まえると、インフレ率は2024年後半までにFRBの目標を大きく下回る水準まで低下すると予想される。したがって、FRBは現時点の予想を上回る利下げを行うと見込まれる。

中国:依然として景気支援策が必要であるが、状況の大きな好転は期待できない
China Growth
経済成長とインフレ率が鈍化していることから、中国の金利は現在の低い水準でしばらく推移すると見込む。

中国に関する基本シナリオとして、低成長の継続やデフレ圧力の高まりを想定しており、その影響が世界経済に波及する可能性がある。長期的な観点から見ると、経済成長のエンジンが不動産から再生可能エネルギー、先進的製造業、および近代インフラなどにシフトしていることが楽観的な見方をもたらしている。一方、住宅市場の低迷やその他の構造的な課題など、短期的な課題は依然として存在している。また、政策当局は需要よりも供給を増やすことに注力しており、このことは世界的な物価下落要因になる可能性がある。中国のGDPデフレーターはマイナスに転じており、需要不足を背景にデフレリスクが高まっている。政策当局は信頼の回復に努めているが、全体的なセンチメントが引き続き低迷しているため、預金準備率の引き下げや、企業を後押しする政策の制定など、より的を絞った景気支援策が実施される可能性がある。

欧州:ディスインフレが進行
China Growth

ユーロ圏の経済成長は依然として低迷している。主要政策金利が過去最高に近い水準にある中で、家計部門と企業部門への信用供与が減少しており、フランスを除くほとんどの国で信用の伸びがマイナスとなり、欧州周辺国は特に厳しい状況となっている。先行指標は依然として経済の停滞または緩やかな縮小を示唆しているが、ここ最近では低水準で安定している。ドイツの建設市場の見通しは特に厳しい。ユーロ圏の化学業界では、エネルギー価格の高騰が企業業績を圧迫している。また、自動車セクターでは、中国からの自動車輸入の増加が新たな業績圧迫要因となっている。ただし、労働市場はそれほど悪化しておらず、実質所得が増加していることから、サービス・セクターを中心に個人消費は底堅く推移している。

ECBのタカ派メンバーは最近明らかにトーンを和らげてきている。

欧州中央銀行(ECB)は12月の理事会で中銀預金金利を4%に据え置くことを決定した。ECBはディスインフレが進行しているとの認識を示し、総合インフレ率が2026年に2%の目標を下回るとの見通しを示した。ECBのタカ派メンバーも追加利上げに消極的な姿勢を示した。ただし、利下げはまだ議論されておらず、ECBメンバーは依然としてインフレ再燃リスクを警戒しているように思われる。コアインフレ率の低下が続き、春にかけて賃金の伸びが鈍化すれば、インフレ率が目標に向けて低下するとの見方が強まり、2024年4月~6月期に利下げが実施されると見込まれる。

英国では、2023年上半期にはインフレ率が市場予想を上回る伸び率となったものの、最近のインフレ率はエコノミスト予想とイングランド銀行(BOE)の予想を大きく下回っている。インフレ率が予想より速いペースで低下していることから、市場では追加利上げ観測が後退する一方で、早期かつ大幅な利下げへの期待が高まっている。また、経済成長は低迷しており、2023年7月~9月期および10月の実質国内総生産(GDP)はマイナス成長となった。2024年に入っても成長率はほぼ横ばいで推移すると予想されるが、これまでの利上げの効果が時間差で表れていることを踏まえると、成長率の下振れリスクが懸念される。賃金の伸びは高止まりしているものの、労働市場が軟化しており、消費者物価指数が低下傾向にあることから、今後は賃金上昇圧力が緩和に向かうと予想される。以上を踏まえると、市場はBOEが実行するであろう利下げ幅を過小評価していると考えられる。

アウトルック:当社の見通し

先進国市場:地域別レラティブ・バリュー

カナダ:カナダ中銀は利下げに踏み切ると見込まれるが、上半期の利下げは市場にほぼ織り込み済み。利下げサイクルが始まれば、中期国債の利回りは低下する可能性がある。財政見通しを踏まえると、カナダ長期国債は米長期国債と比べてフェア・バリューであるが、米長期国債をアウトパフォームすることは困難と思われる。
米国:経済成長とインフレは長期的に鈍化する可能性があるが、債券利回りはまだこれを反映していない。FRBの政策転換のタイミングは不明であり、何カ月も先のことになると思われる。中長期債利回りは2024年に低下すると見込まれる。
英国:市場の関心は引き続きBOEの利下げ時期と利下げ幅に集まると見込まれる。当社の見通しを踏まえると、市場は利下げ幅を依然、過小評価している可能性がある。英国債はプラスのリターンを生み出す可能性がある。
欧州:ユーロ圏の債券利回りが2023年10月~12月期に大幅に低下したことを受け、オーバーウエイト幅を縮小した。債券利回りがさらに低下する可能性もあると予想されるため、仮に利回りが直近の低水準から上昇に転じた場合、ポジションの積み増しを検討する。
中国:金利は2024年第1四半期に低水準で推移し、その後、中国人民銀行は金融政策スタンスの正常化を進めると予想される。
日本:日本10年国債利回りの上昇が予想される。
オーストラリア:ボラティリティの高い状況が続いている中で、10年債と20年債を戦術的に保有する。金利は2023年10月~12月期に大きく低下したため、デュレーションに対して以前ほど強気ではないものの、依然として金利低下余地があると見られる。
エマージング市場についてはセクター別レラティブ・バリュー参照
米国 米国の経済成長は2024年にさらに減速すると見込まれる。一方、インフレ率(6カ月間の年率ベース)はすでにFRBの目標に達している。利下げが行われたとしても、当面は引き締め的な金利水準が続くため、労働市場の需給バランスはさらに改善すると見込まれる。基本シナリオとしては落ち着いた展開を予想しているが、下振れリスクは存在している。
カナダ カナダ経済は停滞しているため、カナダ中央銀行はFRBよりも先に利下げを開始する可能性がある。ただし、賃金の伸びは加速している一方、生産性は低下している。インフレ率は低下傾向を示しており、カナダ中央銀行は製造業部門における需給の緩みによってディスインフレが進む可能性があると見込んでいる。
欧州 ECBの政策金利は、予想期間内にインフレ率を目標値まで引き下げることができるとECB理事が考える水準に達した。コアインフレ率がさらに低下し、賃金の伸びが鈍化すれば、インフレ率に対するそうした見方がさらに強まると考えられる。欧州の経済活動は弱含みで推移している。経済成長が減速し、インフレ率がECBの目標に近づいているため、政策金利を4.00%に維持する必要性が薄れると考えられる。
英国 先行指標を見る限り、経済活動は弱含みで推移すると見込まれる。これまでの利上げの効果が経済に浸透しており、労働市場はさらに軟化している。インフレ率の鈍化傾向が続くと予想され、インフレ率は中央銀行の目標に近づくと見込まれる。
中国 政策当局は安定的な経済成長を重視する姿勢を示しており、2024年の経済成長率は5.0%~5.5%程度になると予想される。広範囲にわたる大規模な景気刺激策が実施される可能性は低いが、的を絞った景気刺激策が引き続き実施されると予想される。
日本 経済成長やインフレ率が底堅く推移している中で、日銀はバランスシートの縮小やマイナス金利政策の解除など、さらなる政策調整を行う可能性があると考えられる。ただし、仮に日銀がマイナス金利政策を解除したとしても、すぐに利上げサイクルを開始するわけではない。
オーストラリア 金融引き締めの効果が経済に十分に浸透する中で、今後は個人消費が鈍化すると予想される。オーストラリア準備銀行(RBA)は利上げサイクルを終了したと考えられるが、借入金利の上昇、生活費の上昇、実質所得の減少、および貯蓄の減少などにより、2024年にかけて裁量支出が減少すると見込まれる。とは言うものの、失業率は比較的低水準で推移にとどまり、移民受け入れも横ばいと予想されるため、景気後退は穏やかなものにとどまるか、あるいは回避されるシナリオになる可能性が高い。

セクター別レラティブ・バリュー

投資適格社債
米国
見通し 企業のバランスシートは引き続き健全であるため、景気減速を乗り切ることが可能であると考えられる。不透明なマクロ環境が続く中で、企業の経営陣は概ね保守的な姿勢を維持しているが、債券保有者に不利益をもたらすM&Aの増加について注視している。
レラティブ・バリュー +/- スプレッドはソフトランディングをすでに織り込んでいるため、ネガティブ・サプライズが発生した場合には損失が生じる恐れがある。需給環境が良好であることを踏まえ、中立に近いスタンスを維持する方針である。
欧州
見通し 経済成長は停滞しているが、投資適格社債のファンダメンタルズは比較的底堅く推移している。銀行は好業績を維持しており、銀行セクターには投資妙味があると考えられる。ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の再投資を2024年末に終了する予定であるが、社債に対する需要は堅調に推移している。
レラティブ・バリュー +/- スプレッドは2023年10月~12月期に堅調なパフォーマンスとなり、過去平均と比べてやや縮小した水準にある。債券に対する健全な需要があるため、スプレッドは縮小した水準で推移する可能性があるが、より有利な購入機会が訪れる可能性もある。
オースト ラリア
見通し 景気減速懸念があるものの、クレジットのファンダメンタルズは健全な状態を維持している。当社では、インフレ圧力の高止まりに対処でき、ディフェンシブな性質を持つ発行体に注目している。幸い、オーストラリアの多くの発行体は市場を独占または複占しているため、このような特性を有しており、規制を受けている資産の多くは利益率を確保できると見込まれる。
レラティブ・バリュー + 当社ではクレジットのオーバーウエイトを維持しており、特に短期の保有では、規制に守られた経営を行っている一部のREIT、公益セクターおよびインフラ・セクターを選好している。また、無担保の金融シニア債や、海外の大手銀行の新発債も選好している。
ハイ・イールド社債
米国
見通し ハイ・イールド社債のスプレッドは比較的魅力的な水準。利回りは魅力的なリターンを提供する可能性がある。市場全体の格付け水準が高いことから、デフォルト率は過去平均に近い水準、またはそれを下回る水準で推移する可能性がある。発行が低水準で推移する中、魅力的な利回りを求めた機関投資家や個人投資家の資金が集まり、需給環境は市場のサポート要因になり得る。
レラティブ・バリュー + 当社は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不況からまだ回復途上にあるサービス関連セクター(航空、クルーズ船、およびホテルなど経済活動を再開した業種)や、ライジングスターの候補銘柄に投資機会を見出している。消費や小売り、住宅建設関連は注視している。
欧州
見通し 最近の企業業績を見る限り、企業のファンダメンタルズは概ね健全である。欧州経済が低迷している中で、景気循環セクターでは一部に弱さが見られる。2024年1月~3月期には社債の供給が増加すると見込まれるが、質の高い銘柄や、借り換え目的の発行が引き続き中心になると予想される。純発行は低水準で推移すると予想される。
レラティブ・バリュー +/- ハイ・イールド社債セクターのスプレッドは2023年10月~12月期、5年間の平均水準以下に縮小し、その後は不安定な展開となっている。償還期限が短いコーラブル社債銘柄を引き続き選好しており、新規発行銘柄については投資先を厳選し、BB格/B格の銘柄に注目している。一方、特定の景気循環セクター(化学、建設資材、包装)に対しては慎重な姿勢を維持している。
バンクローン
米国
見通し バンクローンのスプレッドは比較的魅力的である。金利上昇や景気減速の影響により、バンクローンのファンダメンタルズは悪化したが、足元の利回りは高く、デフォルト率の上昇に対して十分なクッションが提供されている。バンクローンのバリュエーションは改善している。また、アンダーパーの変動金利ローンに対するCLOからの需要が存在する一方で、新規発行は限定的であり、需要が供給を上回り、需給環境が改善する可能性がある。
レラティブ・バリュー + バンクローン市場では、銘柄を厳選し、問題のある銘柄を避けることでアウトパフォームするだろう。ファンダメンタルズが改善しており、コール価格を下回る水準で取引されている企業を重視する。
CLO
米国
見通し CLOアービトラージ取引を取り巻く環境が改善し、マクロ環境が広範囲にわたり安定して推移した場合、CLOの発行が増加し、短期的にはスプレッドが比較的レンジ内で推移すると見込まれる。海外投資家のヘッジコストは高止まりしているが、高格付けのCLOは依然として、限定的な信用リスクに対して魅力的な利回りを提供している。
レラティブ・バリュー + AAA格のCLOは非常に魅力的であると見ており、このCLOは堅固な構造的プロテクションを有していることから、バンクローンのスプレッドにとって強気または弱気のいずれの環境でも引き続き好調なパフォーマンスを上げるとの見方を維持している。
住宅ローン & 消費者ローン・クレジット
エージェンシーMBS
見通し エージェンシー・モーゲージ(MBS)は現在、スプレッドが魅力的な水準で、期限前償還リスク(プリペイメント・リスク)が構造的に低く、ファンダメンタルズも堅調である。FRBや銀行の需要減少とボラティリティの上昇が依然としてマイナス要因となっているが、当セクターは投資機会をもたらしている。
レラティブ・バリュー + サブセクター15年物よりも30年~20年物を選好。利回りやコンベクシティを向上させるため、銘柄選択に重点を置いている。
ノン・エージェンシーRMBS
見通し 住宅ローン金利の低下、インフレ率の鈍化、および消費者信頼感の上昇などにより、米国では住宅の値ごろ感が改善している。全米の住宅価格の上昇率は長期平均である年率3~4%に近づいていることから、短期的には住宅価格の上昇が抑えられると予想される。地域別に見ると、住宅価格と在庫水準のばらつきが拡大しており、今後もこうした状況が続く可能性がある。不動産市場は様々なマクロ問題に直面しているものの、住宅ローン市場でデフォルト率が大幅に高まる可能性は低いと考えられる。
レラティブ・バリュー + 魅力的な借り手のプロフィールと高い信用力を持つ政府支援機関(GSE)の信用リスク移転債(CRT)や、非適格住宅ローン(Non-QM)を選好する。
ノン・エージェンシーCMBS
見通し シニア証券のスプレッドは2023年10月~12月期に30bps縮小し、価格は大幅に上昇した。一方、相対ベースでは、資本構成全体にわたりスプレッドが拡大した水準にあり、特にメザニン証券と劣後証券についてはスプレッドが大幅に拡大している。新たに組成されるCMBSのクーポンが低下していることから、取引や借り換えが増加すると見込まれる。一方、オフィス市場のセンチメントは改善していない。
レラティブ・バリュー + 質が高く、借り手のエクイティが大きい不動産に対する低レバレッジのエクスポージャーは、コンデュイット型CMBS市場や、シングルアセット/シングルボロワー(SASB)型CMBS市場において、魅力的な投資機会を提供している。
資産担保証券(ABS)
見通し 消費者のファンダメンタルズは引き続き堅調であるが、低所得層の消費者は借入を増やしているため、信用力が悪化している。当社では消費者のファンダメンタルズに対して慎重な姿勢を維持しており、格付けの低い消費者ローンABSセクターの信用力の悪化に注意を払っている。格付けの高い消費者ローンABSセクターや、定評のあるスポンサー、見通しが良好なセクターを選好している。
レラティブ・バリュー + クレジット・カーブはフラット化した。格付けの高い消費者セクターやオン・ザ・ランのABSセクターにおけるAAA格のシニア債に注力している。
インフレ連動債
米国
見通し 米国物価連動国債の実質利回りは前回のサイクルのピーク水準を上回っており、魅力的である。ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の水準は、イールドカーブ全体にわたりFRBの目標に近づいている。今後もディスインフレ傾向が続くと予想されるものの、インフレ連動債(TIPS)は現在、アウトライト取引で、また、ほとんどのリスク・シナリオにおいて、米国債と比較して高い価値を示している。
レラティブ・バリュー + 長期のBEIは、名目米国債と比較してフェア・バリューだが、米国債券ポートフォリオに分散効果をもたらす資産クラスとしては魅力的であると思われる。
欧州
見通し ユーロ圏のインフレ期待が大幅に低下する中で、債券利回りは2023年10月~12月期に低下した。インフレ率の緩やかな低下傾向が続くと予想され、特にコアインフレ率の低下が目立ち始めている。短期インフレ連動債の利回りは、ECBのインフレ目標とほぼ同水準。
レラティブ・バリュー +/- 現在の利回り水準を踏まえ、インフレ連動債に対する見方を中立としている。30年物のインフレ連動債のバリュエーションは過去平均よりもやや割高である一方、バリュエーションは短期インフレ連動債の過去平均と同水準である。
日本
見通し 10年物のBEIが2%を大きく下回っているため、日本の物価連動国債は依然割安である。インフレ率は高水準で推移すると予想されるが、その後、年末にかけて鈍化すると予想される。しかし、コアインフレ率が予想よりも持続して上昇していることから、インフレ圧力は当初の予想よりも強まっている。
レラティブ・バリュー + 名目利回りに対する実質利回りのオーバーウエイトを維持する。
地方債
米国
見通し 地方債は昨年末にかけて堅調なパフォーマンスとなったが、地方債の名目利回りや非課税収入はここ10年近くで最も高い水準となっている。FRBは2024年に利下げに転じると予想されているため、預金金利が低下する可能性がある。一方、潤沢な税収を背景に、地方債は健全な信用力を有しているため、地方債に対する需要が増加し、結果として地方債市場は堅調に推移すると予想される。
レラティブ・バリュー + デュレーションを長期化する機会を模索している。納税申告シーズンを前に市場のボラティリティが高まれば、より有利な購入機会が訪れる可能性がある。投資適格地方債の中でも格付けの低い証券を選好している。一方、一部のハイ・イールド・セクターについては、経済情勢の悪化によってパフォーマンスが低下する恐れがあるため、慎重な姿勢を維持する。
エマージング債
米ドル建て
エマージング
ソブリン債
見通し FRBの利下げ、コモディティ価格の安定、および地政学的リスクの後退などが、エマージングソブリン債価格の上昇要因になると見られる。リスク要因としては、米国の「高金利の長期化」シナリオ、予想外の地域紛争の勃発、およびエマージング市場と先進国市場の選挙に伴う市場ボラティリティの高まりなどが挙げられる。
レラティブ・バリュー + フロンティア市場のソブリン債はバリュエーションが割安であるため、2024年に魅力的なトータル・リターンを生み出す可能性がある。投資に際しては、各国特有の信用リスク状況を勘案する必要がある。
現地通貨建て
エマージング債
見通し エマージング市場の中央銀行はここ2年間にわたり積極的な金融引き締めを実施していることから、2024年には金利と外国為替の両方の見通しが良好。ラテンアメリカの中央銀行は利下げを開始しているが、今後も金融緩和を継続するかどうかはFRBの政策次第である。
レラティブ・バリュー + 為替市場はマクロ経済動向の影響を受けやすいが、上昇していた特にラテンアメリカの現地通貨建てエマージング債券利回りは、ディスインフレの継続と米国のソフトランディングの恩恵を受ける可能性がある。一方、アジアの現地通貨建て債券利回りは米国利回りと比較して歴史的な低水準にある。
エマージング社債
見通し エマージング社債は健全なバランスシートを維持しているが、現地の金利が上昇していることや、世界の金融状況が逼迫していることを踏まえ、当社は国内での発行に特化している発行体の流動性を注視している。一方、景気循環セクターは欧州や中国の景気減速による悪影響を受けている。
レラティブ・バリュー +/- エマージング社債のバリュエーションは先進国社債と比較してタイトであることから、流通市場よりも割安な水準で購入できる新規発行市場に注目している。エマージング社債はデュレーションが短く、ボラティリティが低いことから、エマージング市場への保守的な配分を模索している投資家に適した資産であるかもしれない。
見通し レラティブ・バリュー
投資適格社債
米国 企業のバランスシートは引き続き健全であるため、景気減速を乗り切ることが可能であると考えられる。不透明なマクロ環境が続く中で、企業の経営陣は概ね保守的な姿勢を維持しているが、債券保有者に不利益をもたらすM&Aの増加について注視している。 +/- スプレッドはソフトランディングをすでに織り込んでいるため、ネガティブ・サプライズが発生した場合には損失が生じる恐れがある。需給環境が良好であることを踏まえ、中立に近いスタンスを維持する方針である。
欧州 経済成長は停滞しているが、投資適格社債のファンダメンタルズは比較的底堅く推移している。銀行は好業績を維持しており、銀行セクターには投資妙味があると考えられる。ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の再投資を2024年末に終了する予定であるが、社債に対する需要は堅調に推移している。 +/- スプレッドは2023年10月~12月期に堅調なパフォーマンスとなり、過去平均と比べてやや縮小した水準にある。債券に対する健全な需要があるため、スプレッドは縮小した水準で推移する可能性があるが、より有利な購入機会が訪れる可能性もある。
オースト ラリア 景気減速懸念があるものの、クレジットのファンダメンタルズは健全な状態を維持している。当社では、インフレ圧力の高止まりに対処でき、ディフェンシブな性質を持つ発行体に注目している。幸い、オーストラリアの多くの発行体は市場を独占または複占しているため、このような特性を有しており、規制を受けている資産の多くは利益率を確保できると見込まれる。 + 当社ではクレジットのオーバーウエイトを維持しており、特に短期の保有では、規制に守られた経営を行っている一部のREIT、公益セクターおよびインフラ・セクターを選好している。また、無担保の金融シニア債や、海外の大手銀行の新発債も選好している。
ハイ・イールド社債
米国 ハイ・イールド社債のスプレッドは比較的魅力的な水準。利回りは魅力的なリターンを提供する可能性がある。市場全体の格付け水準が高いことから、デフォルト率は過去平均に近い水準、またはそれを下回る水準で推移する可能性がある。発行が低水準で推移する中、魅力的な利回りを求めた機関投資家や個人投資家の資金が集まり、需給環境は市場のサポート要因になり得る。 + 当社は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不況からまだ回復途上にあるサービス関連セクター(航空、クルーズ船、およびホテルなど経済活動を再開した業種)や、ライジングスターの候補銘柄に投資機会を見出している。消費や小売り、住宅建設関連は注視している。
欧州 最近の企業業績を見る限り、企業のファンダメンタルズは概ね健全である。欧州経済が低迷している中で、景気循環セクターでは一部に弱さが見られる。2024年1月~3月期には社債の供給が増加すると見込まれるが、質の高い銘柄や、借り換え目的の発行が引き続き中心になると予想される。純発行は低水準で推移すると予想される。 +/- ハイ・イールド社債セクターのスプレッドは2023年10月~12月期、5年間の平均水準以下に縮小し、その後は不安定な展開となっている。償還期限が短いコーラブル社債銘柄を引き続き選好しており、新規発行銘柄については投資先を厳選し、BB格/B格の銘柄に注目している。一方、特定の景気循環セクター(化学、建設資材、包装)に対しては慎重な姿勢を維持している。
バンクローン
米国 バンクローンのスプレッドは比較的魅力的である。金利上昇や景気減速の影響により、バンクローンのファンダメンタルズは悪化したが、足元の利回りは高く、デフォルト率の上昇に対して十分なクッションが提供されている。バンクローンのバリュエーションは改善している。また、アンダーパーの変動金利ローンに対するCLOからの需要が存在する一方で、新規発行は限定的であり、需要が供給を上回り、需給環境が改善する可能性がある。 + バンクローン市場では、銘柄を厳選し、問題のある銘柄を避けることでアウトパフォームするだろう。ファンダメンタルズが改善しており、コール価格を下回る水準で取引されている企業を重視する。
CLO
米国 CLOアービトラージ取引を取り巻く環境が改善し、マクロ環境が広範囲にわたり安定して推移した場合、CLOの発行が増加し、短期的にはスプレッドが比較的レンジ内で推移すると見込まれる。海外投資家のヘッジコストは高止まりしているが、高格付けのCLOは依然として、限定的な信用リスクに対して魅力的な利回りを提供している。 + AAA格のCLOは非常に魅力的であると見ており、このCLOは堅固な構造的プロテクションを有していることから、バンクローンのスプレッドにとって強気または弱気のいずれの環境でも引き続き好調なパフォーマンスを上げるとの見方を維持している。
住宅ローン & 消費者ローン・クレジット
エージェンシーMBS エージェンシー・モーゲージ(MBS)は現在、スプレッドが魅力的な水準で、期限前償還リスク(プリペイメント・リスク)が構造的に低く、ファンダメンタルズも堅調である。FRBや銀行の需要減少とボラティリティの上昇が依然としてマイナス要因となっているが、当セクターは投資機会をもたらしている。 + サブセクター15年物よりも30年~20年物を選好。利回りやコンベクシティを向上させるため、銘柄選択に重点を置いている。
ノン・エージェンシーRMBS 住宅ローン金利の低下、インフレ率の鈍化、および消費者信頼感の上昇などにより、米国では住宅の値ごろ感が改善している。全米の住宅価格の上昇率は長期平均である年率3~4%に近づいていることから、短期的には住宅価格の上昇が抑えられると予想される。地域別に見ると、住宅価格と在庫水準のばらつきが拡大しており、今後もこうした状況が続く可能性がある。不動産市場は様々なマクロ問題に直面しているものの、住宅ローン市場でデフォルト率が大幅に高まる可能性は低いと考えられる。 + 魅力的な借り手のプロフィールと高い信用力を持つ政府支援機関(GSE)の信用リスク移転債(CRT)や、非適格住宅ローン(Non-QM)を選好する。
ノン・エージェンシーCMBS シニア証券のスプレッドは2023年10月~12月期に30bps縮小し、価格は大幅に上昇した。一方、相対ベースでは、資本構成全体にわたりスプレッドが拡大した水準にあり、特にメザニン証券と劣後証券についてはスプレッドが大幅に拡大している。新たに組成されるCMBSのクーポンが低下していることから、取引や借り換えが増加すると見込まれる。一方、オフィス市場のセンチメントは改善していない。 + 質が高く、借り手のエクイティが大きい不動産に対する低レバレッジのエクスポージャーは、コンデュイット型CMBS市場や、シングルアセット/シングルボロワー(SASB)型CMBS市場において、魅力的な投資機会を提供している。
資産担保証券(ABS) 消費者のファンダメンタルズは引き続き堅調であるが、低所得層の消費者は借入を増やしているため、信用力が悪化している。当社では消費者のファンダメンタルズに対して慎重な姿勢を維持しており、格付けの低い消費者ローンABSセクターの信用力の悪化に注意を払っている。格付けの高い消費者ローンABSセクターや、定評のあるスポンサー、見通しが良好なセクターを選好している。 + クレジット・カーブはフラット化した。格付けの高い消費者セクターやオン・ザ・ランのABSセクターにおけるAAA格のシニア債に注力している。
インフレ連動債
米国 米国物価連動国債の実質利回りは前回のサイクルのピーク水準を上回っており、魅力的である。ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の水準は、イールドカーブ全体にわたりFRBの目標に近づいている。今後もディスインフレ傾向が続くと予想されるものの、インフレ連動債(TIPS)は現在、アウトライト取引で、また、ほとんどのリスク・シナリオにおいて、米国債と比較して高い価値を示している。 + 長期のBEIは、名目米国債と比較してフェア・バリューだが、米国債券ポートフォリオに分散効果をもたらす資産クラスとしては魅力的であると思われる。
欧州 ユーロ圏のインフレ期待が大幅に低下する中で、債券利回りは2023年10月~12月期に低下した。インフレ率の緩やかな低下傾向が続くと予想され、特にコアインフレ率の低下が目立ち始めている。短期インフレ連動債の利回りは、ECBのインフレ目標とほぼ同水準。 +/- 現在の利回り水準を踏まえ、インフレ連動債に対する見方を中立としている。30年物のインフレ連動債のバリュエーションは過去平均よりもやや割高である一方、バリュエーションは短期インフレ連動債の過去平均と同水準である。
日本 10年物のBEIが2%を大きく下回っているため、日本の物価連動国債は依然割安である。インフレ率は高水準で推移すると予想されるが、その後、年末にかけて鈍化すると予想される。しかし、コアインフレ率が予想よりも持続して上昇していることから、インフレ圧力は当初の予想よりも強まっている。 + 名目利回りに対する実質利回りのオーバーウエイトを維持する。
地方債
米国 地方債は昨年末にかけて堅調なパフォーマンスとなったが、地方債の名目利回りや非課税収入はここ10年近くで最も高い水準となっている。FRBは2024年に利下げに転じると予想されているため、預金金利が低下する可能性がある。一方、潤沢な税収を背景に、地方債は健全な信用力を有しているため、地方債に対する需要が増加し、結果として地方債市場は堅調に推移すると予想される。 + デュレーションを長期化する機会を模索している。納税申告シーズンを前に市場のボラティリティが高まれば、より有利な購入機会が訪れる可能性がある。投資適格地方債の中でも格付けの低い証券を選好している。一方、一部のハイ・イールド・セクターについては、経済情勢の悪化によってパフォーマンスが低下する恐れがあるため、慎重な姿勢を維持する。
エマージング債
米ドル建て
エマージング
ソブリン債
FRBの利下げ、コモディティ価格の安定、および地政学的リスクの後退などが、エマージングソブリン債価格の上昇要因になると見られる。リスク要因としては、米国の「高金利の長期化」シナリオ、予想外の地域紛争の勃発、およびエマージング市場と先進国市場の選挙に伴う市場ボラティリティの高まりなどが挙げられる。 + フロンティア市場のソブリン債はバリュエーションが割安であるため、2024年に魅力的なトータル・リターンを生み出す可能性がある。投資に際しては、各国特有の信用リスク状況を勘案する必要がある。
現地通貨建て
エマージング債
エマージング市場の中央銀行はここ2年間にわたり積極的な金融引き締めを実施していることから、2024年には金利と外国為替の両方の見通しが良好。ラテンアメリカの中央銀行は利下げを開始しているが、今後も金融緩和を継続するかどうかはFRBの政策次第である。 + 為替市場はマクロ経済動向の影響を受けやすいが、上昇していた特にラテンアメリカの現地通貨建てエマージング債券利回りは、ディスインフレの継続と米国のソフトランディングの恩恵を受ける可能性がある。一方、アジアの現地通貨建て債券利回りは米国利回りと比較して歴史的な低水準にある。
エマージング社債 エマージング社債は健全なバランスシートを維持しているが、現地の金利が上昇していることや、世界の金融状況が逼迫していることを踏まえ、当社は国内での発行に特化している発行体の流動性を注視している。一方、景気循環セクターは欧州や中国の景気減速による悪影響を受けている。 +/- エマージング社債のバリュエーションは先進国社債と比較してタイトであることから、流通市場よりも割安な水準で購入できる新規発行市場に注目している。エマージング社債はデュレーションが短く、ボラティリティが低いことから、エマージング市場への保守的な配分を模索している投資家に適した資産であるかもしれない。