2020年の米大統領選には多くの争点があり、債券投資家に多大な影響を及ぼす可能性がある。大統領選以外でも今回の選挙で各党の上下院における獲得議席に変化があれば、今後の米国経済や投資環境に強い影響をもたらしうる。本稿では5つの重要課題に焦点を合わせ、2020年の選挙結果の潜在的影響を包括的に考察する。
5つの重要課題と債券投資家に
対する市場のインプリケーション
ホワイトハウスと上院過半数の政党が分かれた場合
民主党が両選挙で勝利した場合
コロナ関連の政策面の支援:財政・金融政策
本腰を入れた財政政策であっても、党派意識はその可決や実施を抑制する可能性がある。金融政策については、FRBはハト派スタンスを維持し、市場の下支えを継続しよう。
大規模な財政政策が迅速に可決される可能性がある。ただし、ワクチンが導入され、米国経済が(2021年1月20日の新大統領就任により)回復を続けるとすれば、短期的な経済的影響の算定は難しいかもしれない。
米国の租税政策
「2017年減税・雇用法」に基づいて実行された減税は存続が予想される。その場合、市場/経済にはほとんど影響を及ぼさないだろう。
バイデン氏の政策綱領には、企業・個人双方を対象とする増税が含まれている。当社は増税が経済成長、ひいては市場(例えば社債スプレッド)を抑制すると予想する。ただし、増税は地方債市場には好材料となろう。
米国のインフラ投資
党派意識はインフラ支出の潜在的な規模を抑制する可能性があり、市場や経済に及ぼす影響を制限すると予想される。
バイデン氏は、多彩な「グリーン・ニューディール」政策を実行しよう。クリーンエネルギー関連で直ちに取り掛かれるプロジェクトの有無が、短期的なインフラ支出の規模を制限することが考えられる。従来型のエネルギーセクターは水圧破砕(フラッキング)や探鉱活動(特に環境に敏感な地域)の削減により悪影響を受けるだろう。また、投資資金が他の優先順位が高い分野にシフトし、軍需産業も悪影響を受けるとみられる。
米中関係
党派意識が続けば、中国関連の既存政策の変更を制限する可能性がある。
バイデン政権が誕生すれば、米中関係の形が(必ずしも「実質」ではなくとも)改善する可能性がある。
米欧関係
党派意識はオバマ政権が推進した政策への回帰を制限する可能性がある(特に、トランプ大統領が再選され、共和党が上院の過半数を維持した場合)。
バイデン政権はWTOやWHO等との連携強化や米国のパリ協定への復帰を図ることが考えられる。バイデン政権下では貿易政策の大幅転換は見込まれず、関税が予想外に撤廃されれば市場を「落ち着かせ」よう(また、欧州のスプレッドにとって概して好材料)。
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